ジェントリフィケーションとアーティスト

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ブルックリン美術館ウェブサイトより

都市の中心部に近接した低開発・低所得地域のジェントリフィケーションは、もともとそこで生活している人々の立ち退きを伴うケースが多く、まさにその当事者として、あるいは社会的公正を求める政治的立場から、アーティストたちは世界各地で反ジェントリフィケーション行動を起こしている。ニューヨーク、LA、ロンドン、ベルリン…。

ニューヨークでは昨年11月、コミュニティへのサービスをそのミッションに掲げるブルックリン美術館が、不動産業者の大会「リアルエステート・サミット」に会場を貸したことにアーティストたちが猛反発。反ジェントリフィケーションのネットワークを組織して抗議行動を起こした。大会の阻止はできなかったものの、その後も彼らは美術館側と交渉を重ね、同美術館が開催していた「Agitprop!」展に、当初の予定にはなかったアートワーク《A People’s Monument to Anti-Displacement Organizing》を展示し、深刻な現状を示して行動を呼びかけた。さらに7月10日には美術館のオーディトリアムで「Anti-Gentrification and Displacement」をテーマにコミュニティ・フォーラムを実現させ、関心を持つ人々との連携の第一歩を踏み出したようだ。

一方、ジョージア州メーコン市での出来事には驚いてしまった。メーコンの地域アーツカウンシルMacon Arts Alliance(MAA)は、市の発祥の地でありながら疲弊した歴史的地区を芸術村(Mill Hill Arts Village)として再生する構想を立ち上げ、その目玉プログラムとして、SEAを志向するアーティスト・イン・レジデンスを、全米芸術基金などからの助成を得て創設した。コミュニティ・エンゲイジメントに熟達したアーティストを招いて、地域資源を生かし、地元のアーティストや住民とともに活性化プランを考えてもらおうというものだ。この7月、最初のレジデンシーとして、シカゴとニューヨークから2人のアーティストがやってきた。彼らは住民にインタビューするうち、このプログラムは“アートウォッシシング”、つまりアートがジェントリフィケーションのツールとして使われ、貧しいアフリカ系住民に立ち退きを迫るものではないかと、MAAの広報活動に非協力の態度を取った。そしてほどなく彼らは「契約不履行」としてアーティスト・イン・レジデンスを解雇されてしまった。

MAA側は、この芸術村計画はコミュニティとの合意に基づいて進められ、住民の強制移転はないと主張しているが、アーティスト側はすべて“出来レース”だと感じている。こんな結果になる前に、誰のため、何のためのSEAなのか、ステークホルダーの間で納得のいく対話はなかったのだろうか? 地域へ介入しようとするアーティストと、地域との融和を求める招聘組織とは、そもそも水と油だったのかもしれない。

ブルックリン・コミュニティ・フォーラムについては、ハイパーアレジック、メーコンのアーティスト・イン・レジデンスについては、Art F Cityの記事参照。

(秋葉美知子)