リサーチラボ関連刊行物

SEA専門マガジン『ア・ブレイド・オブ・グラス』日本語版第2号発刊

2019年12月22日

スキンヘッドの警官が真ん中に立つ、ちょっとドキリとするような表紙の第2号。これは、馬を仲介としたワークショップを通じて、コネチカット州ハートフォードの警官や学校警備員と若者との信頼を築く、メラニー・クリーンのプロジェクトの一場面です。

第2号のテーマは「Who(誰)」。「SEAは誰がつくり出すのか」に焦点を合わせています。前述のホースセラピーを用いたプロジェクト、ニューヨーク市がさまざまな部局にアーティストを配置する事業「パブリック・アーティスト・イン・レジデンス」の経験者3人による座談会、作曲家でサウンドアーティストのブライアン・ハーネティが故郷のアパラチアで取り組んでいるリスニング・プロジェクトが紹介され、「アーティストに聞く」では、アクティビスト・アーティストとして知られるドレッド・スコットが、SEAにおけるアーティストの役割について読者からの質問に答えています。
また、ABOGの創立者でエグゼクティブ・ディレクターのデボラ・フィッシャーによる芸術機関の在り方に関する連載エッセイが始まりました。日本語版第2号では、以下の記事を翻訳掲載しています。

  • 第2号イントロダクション
  •  パートナーとしての市:行政機関とコラボレートする3人のアーティスト
  • 「金継ぎ」というアート:若者、警察、馬がケアの政治を覆す
  •  とどまり、聞き、統合する:アパラチアの過去と現在を音でつなぐ
  • インスティチューションを進化させる:誰が帰属するのか?
  • アーティストに聞く:ドレッド・スコットが質問に答える

『ア・ブレイド・オブ・グラス』日本語版第2号のダウンロードはこちら(PDF 3.4MB)

『SEAラウンドトーク記録集』を発刊

2019年10月15日

アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会では、2017年10月〜2018年7月まで10回にわたり「SEAラウンドトーク」シリーズを開催いたしました。このシリーズは、政治や社会に関心を持ち、第一線で活躍するアーティストをゲストに、彼/彼女がソーシャリー・エンゲイジド・アートをいかに捉え、自らの創作活動と社会との関わりをどのように考えているのかを生の声で聞き、聴講者と共にディスカッションする場として企画したものです。

その成果を『SEAラウンドトーク記録集 — アーティストは今、ソーシャリー・エンゲイジド・アートをいかに捉えているのか?』として冊子にまとめました。

入手ご希望の方は、以下のウェブページよりお申し込みください。

アート&ソサイエティ研究センター Publication

 

[Contents]

03 こあいさつ
04 SEA ラウンドトーク実施概要
06 SEA ラウンドトーク講師 プロフィール
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08 清水美帆 | アートの楽屋―アーティストの視点から考えるアートと社会の関係
16 山田健二 | ポスト・スノーデン時代の映像表現
26 高山 明 | 演劇と社会
36 藤井 光 | SEAは可能か?
46 ジェームズ・ジャック | 海を中心とするSEA (=Socially Engaged Art and Southeast Asian Art)
56 池田剛介 | コトからモノヘ―芸術の逆行的転回にむけて
64 竹川宣彰 | ワークショップ:差別団体のデモに抗議してみる
74 岩井成昭 | 辺境=課題先進地域に求められるアートとは?
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84 おわりに

 

[本文より]

  • 地元の人たちにとってアーティスト・イン・レジデンスは、アーティストが短期間ひょっこりやってきて、何かやって帰って行くものとも言える。そういう私たちの置かれた状況を改めて考えてみる機会でもあった。―清水美帆
  • 私はさまざまな場所で、現地に遺る歴史的遺構や遺物を現代に転用するような形で使い直すことや、物質的歴史と現代社会を密接に共存させる状況を意図的につくり出すことで大文字の歴史観を問うプロジェクトを催行してきた。―山田健二
  •  演劇の本質は、「観客がどういう社会モデルをつくるか」にあるのではないかと私は考えている‥‥社会に深く関与するアートがソーシャリー・エンゲイジド・アートであるならば、演劇はそもそもの始まりからして、ソーシャリー・エンゲイジド・アートだったと言えるのではないだろうか。―高山明
  • 今日さまざまな芸術活動において規制や検閲が語られている。それは大体において、何か絶対的な力なり、権力なりが抑圧する、またはSNSを通していろいろな人の声に恐怖してしまい、萎縮してしまうというイメージが浮かぶ‥‥規制や検閲という抑圧があったとしても、芸術の長い歴史の中でさまざまな傑作が生まれ得ていた。―藤井光
  • 昔から海は、隔てる壁ではなく、メディアとして人と人をつなげるものだった。海の重要な機能は「人々をつなげる柔軟な輸送路」なのだ。―ジェームズ・ジャック
  • ソーシャリー・エンゲイジド・アートは、旧来型のモノとしてのアートではない、ある種の社会参加や社会実践に重きを置いていると思う‥‥もう一度アートが持つモノを形作るということの意味を問い直し、その上で芸術と社会の関係を考えていくことが必要ではないか。―池田剛介
  •  「社会運動への興味」と「社会問題に介入するアート」への興味との間には根本的な隔たりがある。‥‥社会運動とアート、そこにはいかんともしがたい溝がある。アート側から「何々してみる」という形で社会にアクセスしていくと、いい結果が出ないと思う。―竹川宣彰
  • 「辺境」だと言わずとも、地方都市におけるアートの現場には、例外なくプレイヤーが不足している。‥‥しかし、そこに居合わせた人が、職業的な特質やスキルの通有部分を相互に共有することでコラボレーションが可能になることもある。‥‥「辺境芸術」の現場が活性化するのはこのようなケースである。―岩井成昭

SEA専門マガジン『ア・ブレイド・オブ・グラス』日本語版を発刊

2019年06月06日

SEAに取り組む米国のアーティストに対象に、プロジェクト資金の助成と活動支援を行っているアートNPO「A Blade of Grass(ABOG)」が、2018年秋にSEAマガジン(年2回発行)を創刊したことは、以前ブログで紹介しましたが、このたびアート&ソサイエティ研究センターSEA研究会は、このマガジンの記事のいくつかを翻訳し、『ア・ブレイド・オブ・グラス』日本語版として編集し、PDFファイルでの公開をスタートしました。

ABOGのプログラムが類似の助成事業と異なる特徴は、支援したプロジェクトに対して単に資金提供するだけでなく、実践の現場を継続して追いかけ、リサーチ、レポートし、ドキュメンタリー映像の制作までを行い、公開している点です。 ABOGのエグゼクティブ・ディレクター、デホラ・フィッシャーはこう書いています。「フィールドリサーチ(実地調査)は、金銭的支援を正当化するための“効果査定”とは異なり、SEAプロジェクトが実施されるときの肌触りやニュアンスを極めて豊かに伝えてくれる。私たちはそこから大きな学びを得ている」。このマガジンも、その学びを幅広くシェアし、SEAという領域をより可視化するために創刊されました。創刊号のテーマは「WHERE(どこ)」。日本語版では、ここに収録された記事のなかから以下の5本を選定しました。

・ 創刊号のイントロダクション
・ リック・ロウへのインタビュー
・ ジャッキー・スメルの《ソリタリー・ガーデンズ》を、異なる三者の視点でとらえた記事
・ スザンヌ・レイシーの回顧展のキュレーター、ドミニック・ウィルスドンによるエッセイ
・ アーティスト、ブレット・クックに対するQ&A

『ア・ブレイド・オブ・グラス』日本語版第1号のダウンロードはこちら(PDF 9.8 MB))

SEAの現場を多様な視点で洞察する記事は、日本における社会とアートの関係性に関心を持つ人々にも新鮮な刺激を与えてくれることと思います。今後、タイムラグは少しありますが、順次、日本語版を編集・公開していきたいと考えています。

(2019.6.6)

ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践―芸術の社会的転回をめぐって

2018年10月13日

アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会は、「リビング・アズ・フォーム」展(巡回版)の開催(2014)、パブロ・エルゲラの著書を翻訳した『ソーシャリー・エンゲイジド・アート入門』の出版(2015)、日本で初めてSEAをテーマとした展覧会「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展―社会を動かすアートの新潮流」の開催(2017)など、SEAを紹介する一連の活動を重ねるなかで、日本でもこういった芸術実践に対する関心が高まっていることを実感することができました。しかし、まだまだその歴史・理論・実践に関する情報は未整理で、多様であいまいな理解がなされている現状があります。

言葉が一人歩きする前に、SEAが生まれてきた背景や理論、実際のアーティストの取り組みをより深く理解し、新たな議論の場をつくる必要があるのではないか、そんな思いで企画したのが本書です。『入門』と同じフィルムアート社に提案したところ、快くを受け入れてもらえ、2018年7月に刊行することができました。

なかでも私たちが本書の核にしたいと考えたのは、第1章で紹介するトム・フィンケルパール(現在ニューヨーク市文化局長)の「.社会的協同(Social Cooperation)というアート─アメリカにおけるフレームワーク」で、彼の2015年の著書『What We Made』の、非常に読み応えのあるイントロダクションを邦訳したものです。米国においてSEAのような芸術実践が誕生した背景を1960年代から概観し、この分野の基礎知識を提供してくれるエッセイです。

このほか、米国でフェミニズムがSEAの誕生に及ぼした影響を論じるカリィ・コンテ、SEAを肯定的に理論化する研究者、グラント・ケスター、芸術の社会的転回の理論的動向を初学者向けに解説する星野太、ビショップとケスターの対立の本質を鋭く論じるジャスティン・ジェスティのテキストを収録。また、実践者の高山明(演出家)と藤井光(美術家・映像作家)のエッセイは、アーティストが社会問題と関わるときのさまざまな課題・問題を提起してくれます。

巻末には、戦後の美術と社会の動向をソーシャリー・エンゲイジド・アートに関連づけてまとめた年表を20ページにわたって収録。議論や研究の資料として活用していただくことを意図しています。センターのカラーページには、2017年の「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展」に参加し、東京でプロジェクトを実施したアーティストたちをフィーチャー、彼らの活動を基礎づけるステートメントも掲載しています。

ソーシャリー・エンゲイジド・アート入門:アートが社会と深く関わるための10のポイント

2016年01月27日

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アート&ソサイエティ研究センターでは、2013年からSEAの理論と実践を深く、幅広く学ぼうと、SEA研究会を開始しました。その最初のテキストとして選んだのが、アーティストであり、ニューヨークMoMAの教育課でアダルト&アカデミック・プログラムのディレクターを務めるパブロ・エルゲラ氏の著書『Education for Socially Engaged Art~A Materials and Techniques Handbook』(Jorge Pinto Books, 2011)でした。翻訳をしながら読み進み、日本の状況と対比しながら議論、考察するうちに、この活動がフィルムアート社の編集部の目にとまり、2015年3月、日本語版の出版が実現しました。

この本は、SEAの実践者や大学などで学ぶ人たちを主な対象としたコンパクトな手引き書です。アーティストが社会と深く関わろうとするとき、美術史はもちろん、教育学、社会学、言語学、エスノグラフィーなど、さまざまな分野の知見を活用しながら、コミュニティを構築し、プロジェクトを組み立てていくことが必要だと、著者は強調します。

SEAの実践を望ましい結果につなげるため手法について、「コミュニティ」「会話」「コラボレーション」「敵対関係」「ドキュメンテーション」などの10のポイントを通じて、理論と実例を交えながら、有益な指針や心得を示してくれます。

リビング・アズ・フォーム展(ノマディック・バージョン)パンフレット 

2016年01月27日
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2014年11月15日から28日まで、アーツ千代田3331で開催した展覧会「リビング・アズ・フォーム(ノマディック・バージョン)~ソーシャリー・エンゲイジド・アートという潮流」のために制作したパンフレットです。展覧会で紹介した11のプロジェクトの概要とアーティストのプロフィールを掲載しています。

 

 

SEAアイディア・マラソン2015ドキュメンテーション

2016年01月27日
SEAマラソン報告書表紙

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「SEAアイディア・マラソン」は、リビング・アズ・フォーム」展の関連企画としてアート&ソサイエティ研究センターが主催した公募イベントです。2015年3月15日、14組のプレゼンターが、地域の課題や社会問題をテーマとしたアート・プロジェクトのアイディアを発表。その中から優秀なアイディアが講評者とオーディエンスの投票によって選ばれました。本記録集は14組すべての発表内容と講評者による考察を、英文とともに紹介しています。