Fall of Freedom―全米でアーティストが反トランプで団結
1960年代、米国のベトナム侵攻や冷戦政策に反発するアーティストたちは連合を組んで、アートによる大規模な抗議プロジェクトを行った。〈アーティストと作家のプロテスト〉によるニューヨーク市での「アングリー・アーツ・ウィーク」(1967年)は、150人のアーティストが参加してつくった全長36メートルの《怒りのコラージュ》をはじめ、開催期間中、何百人ものダンサー、音楽家、映画製作者、詩人たちが反戦イベントを繰り広げた。また、1984年には、「合衆国の中米への介入に反対するアーティストの呼びかけ」を旗印とする広範な連合が、レーガン政権によるエルサルバドル侵攻が差し迫る気配に対し、異議を唱える一連の展覧会やイベントをオルタナティブスペースや商業ギャラリーで開催した。

トランプ第二次政権下で芸術文化に対する抑圧的、検閲的事例が相次いでいる中、このような過去のアーティスト連合による抗議運動が蘇ったかのように、「Fall of Freedom」と称するプロジェクトが全米で11月21日に立ち上がった。
https://www.falloffreedom.com/
この取り組みは、今年の8月、ビジュアル・アーティストのドレッド・スコット、劇作家のリン・ノッテージ、キュレーターのローラ・ライコヴィチらが発起人となって計画された。そのミッションは、次のように勇ましい。
Fall of Freedom は、全米を席巻する権威主義的勢力に抗して結束するよう、芸術コミュニティに緊急の呼びかけを行うものである。われわれの民主主義は攻撃を受けている。表現の自由への脅威は高まりつつあり、異議申し立ては犯罪化されている。インスティチューションとメディアは、プロパガンダの代弁者になってしまった。
この秋、われわれは全国的な“創造的抵抗”の波を立ち上げる。2025年11月21日〜22日を皮切りに、全国のギャラリー、美術館、図書館、コメディクラブ、劇場、コンサートホールが、この瞬間の切迫性を伝える展覧会、パフォーマンス、公開イベントを開催する予定だ。Fall of Freedom は、アーティスト、クリエイター、コミュニティに対し、参加を呼びかけるオープンな招待状である。そして、私たちの国の基盤を形作る経験、文化、アイデンティティを称えるためのものだ。
芸術は重要だ。アーティストはアメリカのファシズムの脅威となる存在である。
Fall of Freedomのウェブサイトには、全米700箇所以上で実施されるイベントの案内をはじめ、これからこのプロジェクトに参加する方法やツールキットなどが掲載されている。
ニューヨーク市ローワーイーストサイドのクレメンテ・ソト・ベレス文化教育センター(通称、ザ・クレメンテ)で開催されている展覧会「Cancel This Show! (このショーを中止しろ!)」はそのイベントの一つだ。この展覧会は、ベラルーシ出身のインディペンデント・キュレーター、オルガ・コペンキナと、アクティビスト・アーティストで『アクティビズムのアート/アートのアクティビズム』の著者でもあるグレゴリー・ショレットのキュレーションで、16人(組)のアーティストによる挑戦的な作品を集めたもの。その主旨は次のように述べられている。
ジャーナリストやコメディアンがMAGA文化や台頭する超国家主義に反対したことで契約解除や公演中止に直面する今、アーティストたちはどこにいるのか?「Cancel This Show!」展は、外国人排斥、都市の軍事化、民主主義制度への攻撃を批判的に検証する作品を集め、この不在に取り組みます。1967年の「アングリー・アーツ・ウィーク」から1984年の「合衆国の中米への介入に反対するアーティストの呼びかけ」まで、歴史的な活動家による展示から着想を得たこのポップアップ展は、現代アーティストに社会批評家としての役割を取り戻すよう挑発します。鋭い批評、ユーモア、パロディを通じて、参加作品は現在の不正義を可視化すると同時に、政治的危機の時代における芸術の責任についての対話を促します。
会場のザ・クレメンテは、プエルトリコ人作家・活動家のクレメンテ・ソト・ベレスに因んで1993年に創設されたプエルトリコ/ラティーノ文化センター。その建物は1897年に公立学校P.S.160のために建てられたネオ・ゴシック様式の建築で、今では地域のランドマークになっているという。11月21日のオープニングには、展示会場まで8階分の階段を上らなければならないにもかかわらず、多くの観客が訪れ、大盛況だったそうだ。
https://www.theclementecenter.org/exhibitions-1/cancel-this-show
2025.11.29 (秋葉美知子)




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