アンダーウォーター The Underwater
全米屈指のビーチリゾートとして知られるマイアミは、世界で最も速いペースで海面が上昇している都市でもあり、今世紀中に水没する恐れさえあるという。「アンダーウォーター(水面下)」は、マイアミの環境アートの先駆者として知られるアーティスト、ゼビエル・コルターダが2018年に始めた参加型SEAプロジェクトだ。海面上昇に対する沿岸地区の脆弱性を住民が正しく認識し、対話や行動を起こすためのきっかけを提供することが目的だった。
コルターダは、彼がスタジオを構えるマイアミ市の南の高級住宅地パインクレストの住人に呼びかけて「アンダーウォーター住宅所有者協会」を立ち上げ、自分たちの家が海抜何フィートにあるかを知り、その数字を描いた看板を、不動産会社が立てる「FOR SALE」看板に似せて、前庭に設置するよう促した。看板のデザインには、コルターダか南極で氷河の氷を溶かして描いた水彩画が使われている。
この取り組みは住宅所有者にとどまらず、未来を担う高校生も巻き込み、高校生たちは地域の大通りの4ヵ所の交差点の路上に、その場の海抜を示す巨大な数字をペインティングした。
さらにコルターダは、マイアミ・デイド郡にある287の公園すべてに、海抜を浮き彫りにしたコンクリートの彫刻を設置するプロジェクトを始めた。この彫刻は、海水、リサイクル骨材、非金属補強材など、エネルギー消費量が少なく、環境に優しい建築資材で作られているという。また、彫刻に彫り込んだQRコードを読み取れば、誰でも自分の家の海抜高度を知ることができ、前庭に設置するための看板を無料で手に入れることができる。
2023年12月4日~10日に開催されたマイアミ・アート・ウィークでは、コルターダはマイアミ・デイド郡のレジデンス・アーティストとして、ビーチやダウンタウンの各所にQRコードが付いた海抜看板を数千枚設置し、海面上昇という見えない脅威を住民や観光客に印象づけた。
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