「くにたちアートビエンナーレ2015」クロージング・フォーラムの冊子が面白い

くにたちビエンナーレ冊子表紙2

くにたちアートビエンナーレ冊子の表紙

2015年3月から8月まで東京都国立市で開催された第1回の「くにたちアートビエンナーレ」は、「芸術の散歩道」創出をめざした、全国公募によるコンクール形式の野外彫刻展を柱とする珍しいスタイルの芸術祭だったが、期間中、展示会、上映会、ワークショップ、まち歩きなど多くのイベントが行われた。

その最後を締めくくった「クロージング・フォーラム」のトークセッションの記録が公開されている。2部構成で、第1部は野外彫刻展受賞者を招いての「彫刻を語る」。第2部は、彫刻家で武蔵野美術大学教授の袴田京太朗氏、『地域アート―美学/制度/日本』の編著者で文芸評論家の藤田直哉氏、現代美術家でこのビエンナーレにも参加した北澤潤氏による鼎談「地域アートと社会の関係」。日本全国アートプロジェクト百花繚乱のいま、この第2部の議論が非常にタイムリーで、問題の在処もはっきりして興味深い。ソーシャリー・エンゲイジド・アートという言葉も登場し、SEAと地域アートの関連性が語られる。なかでも示唆に富むのは、アーティスト北澤氏のこんな発言だ。

  • 独自の展開をしてきた日本での地域アートやアートプロジェクトと呼ばれるものが、欧米におけるソーシャリーエンゲージドアートの文脈では説明しきれない固有の志向性のようなものがある気がします。言ってしまえば、「アートのためのアートプロジェクト」でも「社会のためのアートプロジェクト」もない、別の価値観が胎動しているのではないかと。(P.40)
  • たとえ「アート」っていう言葉がはがれていったとしても、本質にある抽象性やわからなさを維持したままで、まるで地域の小さな祭りのように残っていくっていうのが、僕の試してみたかったことなんですね。(P.41)

トークの全文は、PDF版でダウンロードできるほか、A5版の冊子も発行されていて、くにたち市民芸術小ホールをはじめ、国立市内の公共施設や書店、市外施設などで入手(無料)できるという。

(秋葉美知子)