クリエイティブ・プレイスメイキングを支援するArtPlace

artplace「クリエイティブ・プレイスメイキング」は、2010年に経済学者アン・マークセンとアート・コンサルタントのアン・ガドワが作り出した言葉だが、最近のまちづくりのキーワードになっているようだ。ごく簡単に言えば、芸術文化を計画のコアに置いた、地域コミュニティの総合開発のことである。

全米各地のコミュニティで試みられるクリエイティブ・プレイスメイキングに潤沢な助成をしているプログラムがある。ArtPlace America(通称ArtPlace)による「National Creative Placemaking Fund」がそれだ。全米芸術基金(NEA)の元議長ロッコ・ランデスマンの発案により、NEAや住宅都市開発省をはじめとする連邦政府機関と著名な民間財団、さにら大手金融機関のコラボレーションによって2011年に創設され、これまで256のプロジェクトに7,770万ドルの投資をしている(grant ではなくinvestmentという言葉が使われている)。1件当たり平均30万ドル。競争率は非常に高く、2016年度では、応募1,400件に対し、採択はわずか29件だった。

芸術文化をコアに置いているとはいえ、クリエイティブ・プレイスメイキングの主目的は経済的な地域活性化で、市街地を舞台に、ジェントリフィケーションの後押しをしているケースも多いだろうと私は思っているのだが、先日発表された2016年度の採択事例を見ると、大都市ではない地方のプロジェクトが3割を占め、都市型でも地域住民の日常生活に関わる問題に取り組むプロジェクトが含まれている。「プレイスメイキング」でくくられる活動は、地域的にも内容的にも広がっているようだ。

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McColl Center for Art + Innovation

なかでも目を引いたのは、ノースキャロライナ州シャーロットのMcColl Center for Art + Innovationが、高層住宅やオフィスビル開発計画の進むノース・トライオン・エリアの中にあるホームレス支援施設の移転問題に関連して、シャーロット市や関係組織とともに取り組むプロジェクト「二都物語(A Tale of Two Cities)」だ。私は以前このアートセンターを訪問したことがあるのだが、1926年に建てられたゴシック・リバイバル様式の元教会を改装して1999年にオープンした施設で、アーティスト・イン・レジデンスを中心に、展覧会、ワークショップなどを通して、現代アートと地域コミュニティを結び付ける活動を行っている。今回のプロジェクトは、ジェントリフィケーションとホームレスという、多くの都市で問題になっている衝突に、アートが創造的に介入することによってどのような展望が生まれるのか、非常に興味深い。

(秋葉美知子)