SEAの芸術的なエクセレンスをどうとらえるか
ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)では、プロジェクトの社会的な意図が優先され、アートとしてのエクセレンスは二次的なものになりがちだという議論がある。一方、アートとしての特質を評価する場合、既存のアートワールドのユーロセントリックな美学的基準を当てはめると、多様なバックグラウンドから生まれる表現が軽視されるという問題がある。現実社会のポジティブな変革をめざすSEAを実践するアーティストは「シンボリックとプラクティカル(あるいは美学と成果)」の両方を重視している」(リック・ロウ)と言い、アートとして質の高い活動でないと、強い社会的インパクトを与えることができないと考えている。
それでは、SEAの持つ芸術的特質をどう理解し、どう評価すればよいか。それに答えるかたちで、Americans for the Arts(※)の一事業部門Animating Democracyが、『Aesthetic Perspectives :Attributes of Excellence in Arts for Change(美学的パースペクティブ:変革のためのアートにおける卓越性の特質)』と題するレポートを、アーティスト、教育者、評価者、キュレーター、資金提供者に向けてのガイドとして公表した。以下の11の要素を SEAのアートとしての特質と定義し、それぞれの解説と、事例がまとめられている。そのなかには、一般的なアートにも当てはまるものと、SEAに特有のものとがある。もちろん、SEAはこれらすべての特質を備えなければならないわけではないし、どれか一つを満たせばよいわけでもない。複数のエステティクスの共存がSEAの特徴であり、この11ポイントを参考に、ユーザー独自の基準設定をしてほしいということだ。
Commitment(深い関与)
Communal Meaning(目的の共有)
Disruption(既存の価値観の破壊)
Cultural Integrity(文化的一貫性)
Emotional Experience(感情的体験)
Sensory Experience(感覚的体験)
Risk-taking(リスクをいとわない)
Openness(開放性)
Resourcefulness(高いリソース処理能力)
Coherence(統一性)
Stickiness(持続する粘性)
※全米のローカル・アーツ・エージェンシーやアートNPOなどをネットワークし、アート・アドボカシー活動やカンファレンス、調査研究、各種サポート事業を行っている非営利組織
(秋葉美知子)
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