Seeing Power: Art and Activism in the Twenty-first Century

Nato Thompson
2015

seeing power著者のナトー・トンプソンは、ニューヨークの革新的アートNPO「Creative Time」のキュレーターとして、ここ20年間のソーシャリー・エンゲイジド・アートを概観する展覧会「リビング・アズ・フォーム」(2011)を手掛ており、いま世界のSEAに最も精通する人物の一人だろう。芸術文化がますます資本の論理に組み込まれ、商品化する中で、ソーシャル・チェンジに挑戦するアーティストが直面する苦難や課題を冷徹な視点で見つめながら、その可能性をエンカレッジする一冊である。教訓的(didactic)と多義的(ambiguous)、共鳴のインフラストラクチャー(infrastructure of resonance)、生成変化の場の創出(production of a site of becoming)といった示唆に富むキーワードがちりばめられている。また、ポール・チャンの「ニューオーリンズでゴドーを待ちながら」、ジェレミー・デラーの「It Is What It Is: Conversations About Iraq」などのプロジェクトが、キュレーターとしての自身の体験から語られているのも興味深い。