奴隷の反乱を再演する Slave Rebellion Reenactment
《奴隷の反乱を再演する Slave Rebellion Reenactment》は、1811年1月8日にルイジアナ州ニューオーリンズ近くの砂糖プランテーションで起こった「ジャーマンコースト蜂起」を再現した、コミュニティ参加型のパフォーマンスである。実際の事件は、チャールズ・デスロンデスというリーダーの率いる奴隷たちが、農園主とその息子を襲った後、サトウキビを収穫するためのナイフ、鍬、棍棒、そして銃を持ち、「自由か、死か」と叫びながらニューオーリンズまで2日間、ミシシッピ川に沿って26マイルを行進した。数百人が加わった米国史上最大の奴隷反乱でありながらあまり知られていないこの事件を、有色人種に対する不公正に抵抗する作品で知られるアーティスト、ドレッド・スコットが掘り起こし、自分たちの解放のためだけでなく、奴隷制度を終わらせようと立ち上がった人たちにスポットを当てるアートワークに仕立てた。
再現パフォーマンスは、2019年11月8日から9日にかけて、300人を超える参加者が植民地時代風の衣装を身にまとい、アフリカの太鼓に合わせてクレオール語と英語で歌いながら、26マイルを行進した。実際の反乱は1811年1月11日に奴隷所有者側の民兵と連邦軍によって鎮圧され、指導者たちは処刑されたが、スコットは悲劇的な結末の再現はしなかった。当時の反乱者たちの解放のビジョンを継承し、参加者や観客に自由を想像する可能性を開こうと、行進の終着地ニューオーリンズのコンゴ・スクエアを、自由の戦士たちの功績をたたえる祝祭の場に変えたのだ。
もう一つ、行進の途上、背後で煙を吐く工場群に注目しよう。参加者が辿ったミシシッピ川沿いのルートには、かつて多くのプランテーションがあった。今ではそこに石油精製所や工場が建ち並び、排出された有害な汚染物質によってがんを発症する人が増え、”Cancer Alley(がん回廊) “と呼ばれるようになっている。この地域の住民の多くは低所得の黒人である。奴隷制時代とは別の人種的不公正が今でも存在していることが、見る者に示される。
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