BPのテート美術館へのスポンサーシップ終了が意味するのは?
先月、国際石油資本BPが、26年にわたるテート美術館への資金援助を今年限りで打ち切ることを発表したが、その背景には、アーティスト集団「Liberate Tate(テートを解放せよ)」による6年間のキャンペーンがあった。Liberate Tateは、2010年にテートが行った「アートとアクティビズム」のワークショップを契機に結成され、テート・モダンやテート・ブリテンを舞台に、BPとテートの蜜月を断ち切るために、カルチャー・ジャミング的抗議パフォーマンスを繰り返してきた。
BPのテート支援20周年を記念するパーティ会場のエントランスで、黒装束のメンバーがBPのシンボルマークをあしらった黒い缶から原油のような液体をぶちまける《Licence To Spill》(2010)、テート・ブリテンの床に裸になったメンバーが横たわり、そこに他のメンバーが黒い液体(ひまわり油に木炭を混ぜたもの)を注ぎかける《Human Cost》(2011)、テート・モダンへの寄贈として、風力発電タービンの巨大な翼をタービンホール運び入れる《The Gift》(2012)、テート・ブリテンの1840年代ギャラリーで、メンバー同士が自分の生まれた年の大気中の二酸化炭素濃度(ppm)数値を入れ墨する《Birthmark》(2015)など、彼らのパフォーマンスの特徴は、実に現代アート的というか、“テート美学”を借用していて、美術館の常連にとっては、それがプロテスト行為なのかテートのプログラムなのか、一見して見分けがつかないことにある。
Hyperallergicのインタビュー記事では、 Liberate Tateの長年のメンバーが彼らの戦略を語っていて面白い。自分たちはテート自体に抗議しているのではない、テートを守るために、BPとの結びつきを“フレンドリーに批判する”役割を演じてきたのだという。
“we’re always inside and outside. We’re not so far out that we can be ignored, but we’re not so far inside that we have no leverage — we’re in this powerful limbo.”
もちろん、BPはこの決定について、Liberate Tateのパフォーマンスや厳しい世論とは関係なく、ビジネス環境の変化による支出削減を理由としているが、Liberate Tateのウェブサイトは、“Liberate Tate wins six year campaign to end BP sponsorship of Tate”と、勝利宣言をしている。
そんな折り、BPは34年続けてきたエディンバラ国際フェスティバルへの資金援助もやめたという(the guardian 4/6)。ほかにもBPは大英博物館やロイヤル・オペラハウスなど英国の主要な芸術文化施設のスポンサーであり、テートとエディンバラを引き金に芸術文化支援からの全面撤退に進むのかどうか注目されている。
芸術文化への公的補助金の削減とファンドレイジングをめぐるプレッシャー…経済と倫理のせめぎ合いは世界共通の問題だ。
(秋葉美知子)
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