Entry Points : The Vera List Center Field Guide on Art and Social Justice No. 1
ニュースクール大学のヴェラ・リスト芸術・政治学センターは、社会正義(social justice)の前進を目指して大胆に活動するアーティストに賞を贈る隔年プログラム「ヴェラ・リスト芸術・政治学センター賞」を2012年に創設。その第1回は、20人の推薦委員が世界的視野で候補アーティストとそのプロジェクトをあげ、オクウィ・エンヴェゾーを長とする5人の審査員が受賞者を選定した。選ばれたのは、シカゴで「ドーチェスター・プロジェクト」を展開するシアスター・ゲイツである。本書は初年度の授賞と連動した出版であるため、No.1と記されている。内容は2部構成となっており、第1部には、選考時に最終候補に残った22のプロジェクトが、アーティスト自身の解説と、それを推したノミネーターの論評によって紹介されている。日本ではほとんど知られていないと思われるプロジェクトが大半で、興味深い。後半の第2部はシアスター・ゲイツのドーチェスター・プロジェクトに関する徹底分析。ヴェラ・リスト・センターの所長、カリン・クオニによるインタビューのほか、シャノン・ジャクソンら4人の研究者が領域横断的なゲイツの仕事を論じるエッセイを寄稿している。エディトリアル・デザインにもさまざまな工夫がこらされていて、アートブックとしても秀逸な一冊である。
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