The Democracy Project : A History, a Crisis, a Movement
デヴィッド・グレーバーは、2011年のオキュパイ・ウォールストリート(OWS)の中心にいて、この運動の理論と実践を支えたアナーキスト人類学者だ。本書は、OWSでの経験と歴史的考証から、新しい社会像を描くラディカルな民主主義の可能性を提唱している。キーワードの一つは“horizontal decision making(水平的意志決定)”で、これこそOWSが従来の組織的市民運動と異なる特徴であり、アナーキズムに発する直接民主主義のかたちだと論じる。我々はアナーキズムという言葉にネガティブなイメージを抱きがちだが、コンセンサス、平等、幅広い参加と連帯に基づいた世界を希求するのがアナーキストだとグレーバーは言う。トップダウンの垂直型組織に対抗して、彼らは自分たちを「ホリゾンタルズ」と呼ぶそうだ。本書はアートに直接言及してはいないが、“On the streets, creativity is our greatest tactical advantage”(p.255)という一文は印象的だ。パブロ・エルゲラが言うように、コミュニティ構築や集団的パフォーマンスに関わるSEAの実践者は、アートだけでなく他分野の知見を活用すべきだとすれば、本書は非常に役立つ一冊だろう。イェーツ・マッキーの『Strike Art』とともに読みたい。
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