クラシック音楽とアクティビズムを結びつけるNYのオーケストラ
ブラック・ライブズ・マター運動に呼応して2015年にニューヨーク市で結成されたオーケストラ、ザ・ドリーム・アンフィニッシュト(TDU)は、自らを“アクティビスト・オーケストラ”と名乗っている。アメリカのオーケストラの団員のうち、黒人演奏家の比率は2%、2015~16年のコンサート・シーズンに演奏された女性作曲家の作品は1.7%という状況のもと、TDUはマイノリティの演奏家や作曲家を前面に出したプログラムを展開している。
しかし、そのミッションは、“多様化のための多様化”ではない。オーケストラの創始者で音楽教師のウン・リーは、「メジャーな楽団は、自分たちは常にマージナルなコミュニティに手をさしのべていると宣伝しているが、実際にそのコミュニティが抱える問題には全く取り組もうとしていない。他の音楽ジャンル(ヒップホップ、ロック、ポップス)は政治的な立場を公然と表明しているのに、クラシック音楽だけ沈黙していていいのか」と、プロデューサーや音楽監督、ミュージシャン、デザイナーなどを集めて、TDUチームをつくったという。以来、人種・性別・メディア表現についての講演やディスカッションをコンサートと組み合わせた活動を展開。人権団体をサポートするイベントや、公共広場でのゲリラ演奏などを行ってきた。
7月13日、TDUは、サンドラ・ブランドさん(交通違反で警察に拘束され、留置場の独房で死亡した28歳の女性)の一周忌にあたって《Sing Her Name》と題するコンサートをクーパーユニオンのグレート・ホールで開催した。このコンサートは、女性の作曲家による作品だけを演奏するという画期的なプログラムで、当日は100人を超える演奏家・歌手、10人の講演者が参加し、多様なバックグラウンドを持つ700人を超える観客が集まったという。
ブラック・ライブズ・マター運動の影響力の大きさと、ソーシャリー・エンゲイジド・アート・フィールドの広がりの両方を感じたイベント。INDIEGOGOでクラウドファンディングを成功させていて、詳細は#SingHerNameキャンペーン・ページ参照。
(秋葉美知子)
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