Culture as Weapon:The Art of Influence in Everyday Life
『Seeing Power』に続く、Creative Timeのアーティスティック・ディレクター、ナトー・トンプソンよる最新著作。「武器としての文化」というタイトルからは、芸術文化の力を使って、既存の権力や制度に対抗するアクティビスト・アートについて書かれた本を想像するが、そうではなく、デザインやエンターテインメントを含む広義の芸術文化が、いかに巧みに現代資本主義社会のさまざまなプレーヤーの戦略に利用されているかを論じた一冊である。文化が武器になる、その理由は「人間は理性より感情で動く」存在だから。ナチスのプロパガンダ、“PRの父”エドワード・バーネイズから、不動産ディベロパーの創造都市計画とリチャード・フロリダがそこで果たした役割、軍隊の内乱鎮圧戦略、チャリティやコーズ・リレイティッド・マーケティングまで、人々の心を思い通りに動かすために、文化が道具となってきた歴史・事例が次々に語られ、IKEA、スターバックス、アップルストアが消費者をつかんだカギは、感情的関係性の構築にあると論じる。現代(アメリカ)社会を、共感の生成という視点から見つめ、いまや文化がビッグビジネスの中心になっていることを認識させる、非常にインフォーマティブな読み物である。
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