ソーシャリー・エンゲイジド・アート展 プロジェクト in Tokyo(日本のアーティスト) Socially Engaged Art: Project in Tokyo
アート&ソサイエティ研究センターの主催で、2017年2月18日~3月5日に開催した「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展」では、海外の代表的プロジェクトを紹介するとともに、社会への関わりを強く意識した日本人若手アーティストの活動に注目。アーツ千代田3331のメインギャラリーでの展示に加え、この展覧会に合わせて、東京の各所を舞台に3つのプロジェクトを実施し、その成果やプロセスも公開した。
Self Select: Migrants in Tokyo(西尾美也 Yoshinari Nishio)
西尾美也は、装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目しているアーティスト。《Self Select》シリーズでは、衣服を主要な素材として、言葉の通じない土地で見知らぬ通行人とその場で着ているものを交換し、お互いのポートレイトを撮影することで、装う行為から生まれるコミュニケーションのあり方を探求してきた。《Self Select: Migrants in Tokyo》では、フェーズ1とフェーズつの2段階でプロジェクトを実施 した。
【フェーズ1】(2017年2月18日~26日)ギニア、フランス、スペイン、中国出身の4人の参加者が任意の場所(上野・原宿・渋谷・秋葉原)へ向かい見ず知らずの人に対して単独で服交換の交渉を試みる。西尾、撮影者、服交換補助スタッフが同行し、交渉が成立した場合にのみ姿を現す。参加者が対象者を選ぶ基準は様々であり、瞬時の感覚で判断したものが多かった。結果、計24組の交換が成立した。
【フェーズ2】(2017年2月28日~3月5日)展覧会会場において4名の参加者が、ファッションディレクターと協働で、自分のための新しい服を作る。両者は服交換の記録写真を見ながら話し合いを行い、多彩な素材のサンプルをもと
に参加者が本当に着たい服を導き出す。参加者はそうして出来上がったデザインに基づいて自らミシンを動かして、服を作った。
展示会場では、フェーズ1で交換が成立した記録写真やフェーズ2で作成している服を展示した。さらに3台のモニターを設置し、参加者の事前インタビューや記録映像を上映した。
Believe ~わたしは知ってる~/女子カフェ(明日少女隊 Tomorrow Girls Troop)
明日少女隊(あしたしょうじょたい)は、「すべての性の平等がみんなの幸せ」をテーマに、匿名でマスクを装着して活動する第4世代若手フェミニスト・アートグループ。これまで、展覧会やパフォーマンス、レクチャー、インターネットを通じて、日本の女性が抱える社会問題についての作品の発表やアクションを展開してきた。
《Believe ~わたしは知ってる~》は、性暴力に反対し、第193回通常国会で、性犯罪の厳罰化を盛り込んだ刑法改正案の成立をめざすキャンペーン。2016年末、性犯罪についてのレクチャーを行い、会場で、参加者から性暴力についてのメッセージを書いた紙製のマスクを集めた。2017年1月29日、そのマスクを装着したメンバーが国会前などでパフォーマンス《ビリーブ・マーチ》を実施。展覧会場では、その記録映像を上映するとともに、パフォーマンスで使用したマスクを展示した。
さらに、会場の一角ではアーティストが常駐し、観客と直にコミュニケーションができる場《女子力カフェ》を運営。世界各国をジェンダーギャップで順位付けしながら現状を伝えたり、観客とフェミニズムについて語り合う場を展開した。加えて、国内外から集めた関連書籍を閲覧し交換するプロジェクト「まわる!フェミブック・プロジェクト」や、女性をエンパワーするための 「フェミニスト・グッズ」の展示販売も行った。
URBANING_U 都市の学校 (ミリメーター mi-ri meter)
ミリメーターは、宮口明子と笠置秀紀による建築・デザインユニット。ミクロな視点と分野横断的な戦術で都市空間や公共空間に焦点を当てた活動を続けている。
ミリメーターによる新プロジェクト《URBANING_U》は、行政によるトップダウンの都市計画に対して個々人が実践できる小さな都市計画の研究、またその実践者の養成を目指したもので、空間、制度から身体を解きほぐす「エクササイズ」、座談会やノウハウから考える「ラウンドテーブル」、都市に実装するための実験・研究を行う「インストール」の3つの要素から構成される。
2017年2月18日から1泊2日で実施した【プレスクール】では神保町の第二冨士ビル屋上を拠点に、「 街が小さくなるまで歩き続けなさい」「ビルの山脈を渡りなさい」「テプラで街にボミングしなさい」といったミッションに取り組む9つのワークショップを行った。一般公募によって集まった参加者9名に加えてスタッフ3名も各ワークショップに参加。プロジェクトを通して参加者の身体も都市への認識も柔軟に変化していった。
【プレスクール】の記録は2月22日よりアーツ千代田3331メインギャラリーにて映像、写真、参加者が使用した記録ノート、備品を用いたインスタレーション形式で展示した。
本プロジェクトは今後も単発のワークショップやトーク、宿泊型ワークショップを継続的に展開していく予定。
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