気候変動対策が大きく後退する米国で、2012年の風刺漫画がよみがえる
クライメート・ミュージアム(https://www.climatemuseum.org/)は、気候変動をテーマとした米国初のミュージアムとして、2015年ニューヨークで創設されたNPO。恒久的な施設は持たず、期間限定のスペースで、アートインスタレーション、歴史展示、トークイベントなど、芸術・文化プログラムを通して、人々に行動を促すことを目的に活動を続けている。昨年末の『ニューヨーク・タイムズ』紙の「Big City」コラムは、「2024年、ニューヨークをより良い場所にした7人(と1匹のコヨーテ)」の一人に、創設者のミランダ・マッシー氏を取り上げ、その活動を称賛していた。
最近、このミュージアムから、次のようなニュースレターが届いた。
「先日、バージニア州の気候変動活動家、セス・ヒールド氏から、(風刺漫画家で児童書作家の)トム・トロ氏による素晴らしい一コマ漫画の原画をいただきました。この漫画は2012年、大災害をもたらしたハリケーン・サンディの爪痕が残る中、雑誌『ザ・ニューヨーカー』に掲載されたものです。ヒールド氏は、11年前にその原画を購入されていました。このだびそれを、当ミュージアムに寄贈してくださったことに深く感謝いたします。
この漫画は掲載以来、何度も話題になっています。しかし、政権が大手石油会社のCEOたちに翻弄され、気候正義とクリーンエネルギー政策を破壊的な形で後退させている今、この漫画はかつてないほど重要な意味を持っています。」

写真提供:Climate Museum
漫画を見てみると、ぼろぼろのスーツを着た男(元大企業のCEO?)が、終末的な風景の中で焚き火の横に座り、同じようにぼろを着た3人の子どもたちに話をしている。「そう、地球は破壊された。でも、美しい一瞬のあいだ、私たちは株主のために多くの価値を生み出したんだよ」。よく見ると、この原画では「value(価値)」という語が、ホワイト修正後に書かれていることがわかる。もともと、誰にもわかりやすい「money(お金)」だったのを、企業のプレゼンテーションで使われるような「value」に変更したという。確かに、企業は、株主価値の最大化のために地球を搾取してきた。それに皆、気づいているはずなのに…。

この漫画は、グレタ・トゥーンベリ、レオナルド・ディカプリオ、バーニー・サンダース上院議員のような気候変動問題に取り組む人たちの多くが、ソーシャルメディア上でシェアしたり、抗議運動でのプラカードに使われてきた。
そして今、トランプの第2期政権は、「化石燃料中心」「国際協調後退」「科学軽視」「規制撤廃」「クリーン補助見直し」といった一連の政策を強力に推し進め、気候対策を大幅に後退させている。そんな中で、この漫画は再び辛辣なメッセージを発している。
意義深いこの寄贈を記念して、クライメート・ミュージアムのウェブサイトには、トム・トロ、セス・ヒールド、そしてこの漫画が掲載された当時『ザ・ニューヨーカー』の漫画編集者だったボブ・マンコフへのインタビュー記事が掲載されている。より深い背景に興味のある方は参照を。
/https://www.climatemuseum.org/interview-with-tom-toro
/https://www.climatemuseum.org/interview-with-seth-heald
/https://www.climatemuseum.org/interview-with-bob-mankoff
2025.7.7(秋葉美知子)
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