『SEAラウンドトーク記録集』を発刊

アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会では、2017年10月〜2018年7月まで10回にわたり「SEAラウンドトーク」シリーズを開催いたしました。このシリーズは、政治や社会に関心を持ち、第一線で活躍するアーティストをゲストに、彼/彼女がソーシャリー・エンゲイジド・アートをいかに捉え、自らの創作活動と社会との関わりをどのように考えているのかを生の声で聞き、聴講者と共にディスカッションする場として企画したものです。

その成果を『SEAラウンドトーク記録集 — アーティストは今、ソーシャリー・エンゲイジド・アートをいかに捉えているのか?』として冊子にまとめました。

入手ご希望の方は、以下のウェブページよりお申し込みください。

アート&ソサイエティ研究センター Publication

 

[Contents]

03 こあいさつ
04 SEA ラウンドトーク実施概要
06 SEA ラウンドトーク講師 プロフィール
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08 清水美帆 | アートの楽屋―アーティストの視点から考えるアートと社会の関係
16 山田健二 | ポスト・スノーデン時代の映像表現
26 高山 明 | 演劇と社会
36 藤井 光 | SEAは可能か?
46 ジェームズ・ジャック | 海を中心とするSEA (=Socially Engaged Art and Southeast Asian Art)
56 池田剛介 | コトからモノヘ―芸術の逆行的転回にむけて
64 竹川宣彰 | ワークショップ:差別団体のデモに抗議してみる
74 岩井成昭 | 辺境=課題先進地域に求められるアートとは?
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84 おわりに

 

[本文より]

  • 地元の人たちにとってアーティスト・イン・レジデンスは、アーティストが短期間ひょっこりやってきて、何かやって帰って行くものとも言える。そういう私たちの置かれた状況を改めて考えてみる機会でもあった。―清水美帆
  • 私はさまざまな場所で、現地に遺る歴史的遺構や遺物を現代に転用するような形で使い直すことや、物質的歴史と現代社会を密接に共存させる状況を意図的につくり出すことで大文字の歴史観を問うプロジェクトを催行してきた。―山田健二
  •  演劇の本質は、「観客がどういう社会モデルをつくるか」にあるのではないかと私は考えている‥‥社会に深く関与するアートがソーシャリー・エンゲイジド・アートであるならば、演劇はそもそもの始まりからして、ソーシャリー・エンゲイジド・アートだったと言えるのではないだろうか。―高山明
  • 今日さまざまな芸術活動において規制や検閲が語られている。それは大体において、何か絶対的な力なり、権力なりが抑圧する、またはSNSを通していろいろな人の声に恐怖してしまい、萎縮してしまうというイメージが浮かぶ‥‥規制や検閲という抑圧があったとしても、芸術の長い歴史の中でさまざまな傑作が生まれ得ていた。―藤井光
  • 昔から海は、隔てる壁ではなく、メディアとして人と人をつなげるものだった。海の重要な機能は「人々をつなげる柔軟な輸送路」なのだ。―ジェームズ・ジャック
  • ソーシャリー・エンゲイジド・アートは、旧来型のモノとしてのアートではない、ある種の社会参加や社会実践に重きを置いていると思う‥‥もう一度アートが持つモノを形作るということの意味を問い直し、その上で芸術と社会の関係を考えていくことが必要ではないか。―池田剛介
  •  「社会運動への興味」と「社会問題に介入するアート」への興味との間には根本的な隔たりがある。‥‥社会運動とアート、そこにはいかんともしがたい溝がある。アート側から「何々してみる」という形で社会にアクセスしていくと、いい結果が出ないと思う。―竹川宣彰
  • 「辺境」だと言わずとも、地方都市におけるアートの現場には、例外なくプレイヤーが不足している。‥‥しかし、そこに居合わせた人が、職業的な特質やスキルの通有部分を相互に共有することでコラボレーションが可能になることもある。‥‥「辺境芸術」の現場が活性化するのはこのようなケースである。―岩井成昭