アーティスト、メル・チンのクラウドファンディング

Kickstarterのウェブサイトより

Kickstarterのウェブサイトより

プロジェクトの目的に賛同する人々から実現に必要な資金を集めるクラウドファンディングは、ソーシャル・エンゲイジメントの一つの手段と言えるだろう。

メル・チンは、「オペレーション・ペイダート」をはじめ、さまざまなプロジェクトで環境問題に取り組んでいるアーティストだ。チンは昨年、11月30日からパリで開催されたCOP21に合わせて、地球温暖化に警鐘を鳴らすメッセージ映画「The Arctic is Paris」の撮影を計画した。この映画は、グリーンランドに住み、気候変動によってその生活と文化が脅かされているイヌイットのハンターが、7匹の白いプードルが引くそりでパリ市内を駆け抜ける場面をフューチャーする予定だった。ところが撮影の直前、11月13日にISによる同時多発テロが勃発したため、中止を余儀なくされ、予算の大半を失ってしまった。しかし彼らはあきらめることなく、クルーを縮小し、ロケ地をパリ郊外に移して撮影を完了した。キックスターターを利用したキャンペーンは、そのポストプロダクションの資金を調達するためだった(映像・音楽の編集に加え、翻訳や世界へのビデオ配布の経費を含む)。

キャンペーンは5月22日に終了し、27,000ドルの目標額は見事達成。”Doing nothing about Climate Change is the greatest risk of all.”とならないよう、映画完成後は、気候変動に関するリソースを集積するインタラクティブなウェブサイトhttp://thearcticis.org/を立ち上げる計画だとチンは言う。

クラウドファンディングでは、支援者は寄付額に応じて何らかの“お礼”がもらえることになっているが、このプロジェクトでは、北極熊の爪をあしらったお守り付きの領収書や、プードルの“足跡”付きのポートレート写真など、チャーミングなものが多数用意されていた。

(秋葉美知子)