ABOGがコロナ危機を生き残るために大幅リストラ
新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンとそれに伴う経済活動の落ち込みで、米国のアートNPOは活動の縮小、さらには存続の危機に直面している。ニューヨークを拠点に、ソーシャリー・エンゲイジド・アート支援に特化した活動で定評のあるNPO、ア・ブレイド・オブ・グラス(ABOG)も、この状況に際して、中心事業のフェローシップ・プログラムの廃止、スタッフの解雇など、大幅なリストラを行うという。
アート&ソサイエティ研究センターは昨年からABOGと協力関係を結び、このNPOが年2回発行しているSEA専門マガジンの日本語版を編集・公開してきた。第3号の日本語版刊行を目前にこのニュースを知って、私たちは驚きを禁じ得なかった。
ABOGのフェローシップ・プログラムは、米国のアーティストが主導するSEAプロジェクトに、かなり自由に使える2万ドルの資金をはじめ、ネットワーキングの機会や広報の支援などを提供するもので、毎年8人/組が公募によって選ばれてきた。2014年に始まり、今ではSEAに関心のあるアーティストなら誰もが取りたい助成金になっている。マガジンも、SEAの現場を可視化し、多様な視点で洞察するメディアとして、2018年に創刊された。
今回のリストラで、時間とお金のかかる公募ではなく、コミッションによっていくつかのプロジェクトを支援するかたちに変更するという。活動は大幅に縮小されるが、組織を消滅させないためにこの方法を選んだと、エグゼクティブ・ディレクターのデボラ・フィッシャーはartnetnewsのインタビューで答えている。“a beloved organization”と表現されたこのNPOの、未来に向けての最構築を、これからも期待を持って見ていきたい。
2020.10.7(秋葉美知子)
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