米国のティーンズ向けファッション誌が気候危機に向き合う本を出版

NO PLANET B

現在、アート&ソサイエティ研究センターは、10代の若者が詩作とパフォーマンスによって、気候危機をクリエイティブに訴えるアートプログラム《クライメート・スピークス》の参加者を募集している。この企画は、ニューヨークの非営利団体Climate Museumが2018年に立ち上げた同名のプロジェクトをモデルとしているが、海外ではティーンズ対象にどんな取り組みが行われているかを調べていたら、老舗ファッション誌『ヴォーグ』の姉妹誌『ティーンヴォーグ』が目にとまった。このオンライン・マガジン、ガールズファッションやライフスタイルの雑誌かと思いきや、「スタイル(STYLE)」「文化(CULTURE)」「アイデンティティ(IDENTITY)」と並んで「政治(POLITICS)」というカテゴリーが設けられ、連日、記事が更新されている。「政治」のサブカテゴリーに「環境」もあり、3月24日には「Environmental Racism in Chicago Will be Made Worse by General Iron Facility」と題して、シカゴの高校生たちが、自分たちの住む地域に新しい工業施設が建設されるのは環境差別だとして反対の声を上げている記事が掲載されている(デモする若者たちの画像も素晴らしい)。

その『ティーンヴォーグ』に掲載された気候危機関連の記事を集めて一冊に編集したものが『No Planet B:A Teen Vogue Guide to the Climate Crisis』である。気候正義運動(climate justice movement)をメインテーマに、21人の寄稿者による28本の記事に4人の編集スタッフの新たな寄稿を加え、レポート、アクティビズム、インターセクショナリティ(交差性)※という3つの柱でまとめている。現状の報告、グレタ・トゥーンベリさんをはじめとする10代のアクティビストの活動や意見、若者がリーダーとなって政府や政治家に声を上げる気候ストライキ、環境破壊の責任を問う法廷闘争などのほか、気候変動の責任がほとんどないにもかかわらずその悪影響を最もシビアに受けるコミュニティの現実まで、多方面から問題を提起し、行動を促す内容になっている。

※人種、エスニシティ、国籍、ジェンダー、階級、セクシュアリティなど、さまざまな差別の軸が組み合わさり、相互に作用することで独特の抑圧が生じている状況

さすが、アメリカのジャーナリズムは違うなと感心したのだが、残念なニュースも伝わってきた。先月『ティーンヴォーグ』の新しい編集長に就任する予定だった27歳の女性ジャーナリストが、10年前にアジア人を蔑視するツイートをしていたことが再燃し、これまで2度にわたって謝罪したものの、辞任に追い込まれた。アジア系の人々に対する暴力やハラスメントに抗議する動きが全米で広がる中、編集スタッフからの突き上げもあり、責任を取らざるを得なかったようだ。新編集長はいずれ決まるだろうが、『ティーンヴォーグ』の攻めた政治欄には今後も注目したい。

2021.4.03(秋葉美知子)