Delirium and Resistance:Activist Art and the Crisis of Capitalism

Gregory Sholette
2017

SEAの論客として、アクティビスト・アーティストとして、精力的に活動を続けるグレゴリー・ショレット(1956年生まれ、ニューヨーク在住)の、『Dark Matter』に続く新刊。 Delirium and Resistanceとは「狂躁と抵抗」。再び加熱するアートマーケットとそれへの抵抗という意味だろう。ショレットは、1980年代、批評家ルーシー・リパード(本書に前書きを寄せている)らとともにアーティスト・コレクティブPAD/D (Political Art Documentation and Distribution)を設立し、ニュースレターの発行、フォーラムや展覧会の開催、ポリティカル・アートに関する印刷物やドキュメントのアーカイブなどを通じて、アーティストの間にアクティビズムを広げる活動に打ち込んだことで知られる(1981-89)。近年は、アートワールド存立の背景に隠れた、低収入・劣悪な労働条件で働く人々の問題を提起するとともに、SEAあるいはソーシャル・プラクティスと呼ばれるアート・アクティビティの成立過程やその評価の変化に関して、鋭い指摘を繰り返している。本書はショレットのこれまでの論考の集大成的な一冊だが、特にPART ⅢはSEAに関連して読み応えがある。現代美術評論では、SEAは「関係性の美学」から派生したものととらえられているようだが、その原型はは60年代から、インスティチューションの外で、さまざまな脈絡で発展してきた。「1960年代、70年代、80年代、メインストリームの評論は、コミュニティに根ざしたアートを無視、あるいは冷笑した(p.216)」「コミュニティ・アートの復権は、たぶん、ニコラ・ブリオーが関係性の美学をプロモーションしたことによるのだろう(p.217)」と彼は書いている。