Has Modernism Failed?

Suzi Gablik
1984

2022年5月に87歳で亡くなった美術評論家スージー・ガブリクの1984年の著作。後期資本主義(当時はまだネオリベラリズムという用語は一般的ではなかった)にどっぷりつかったニューヨークのアートシーンは、企業経営のテクニック、PR戦略、専門的マーケティングを駆使してますますビジネスライクになっていて、アーティストもその仕組みに従属することで自らのキャリア形成と経済的成功を欲している。ガブリクはこの状況をあからさまに批判した。
芸術がかつて有していた、精神的、倫理的、社会的役割はどこへ行ったのか、個性と自由を称揚したモダニズムは、社会に対する個人のネガティブな態度を生んでしまった、モダニズムは、私たちを徹底的な主観主義と破壊的な相対主義へと向かわせた、アートが社会的な役割を持ち、アーティストが芸術とは何かということを明確に知っていたときは、アートが自己中心的にのみ機能することは決してなかった、解放と疎外は表裏一体だ……こういった議論は、今では至極当然に思えるが、出版当時は多くのアート関係者から反感を買ったという。1980年代初頭、ジュリアン・シュナーベルがあっというまに時代の寵児になったこと、”Why do people think artists are special ? It’s just another job.” とうそぶくアンディ・ウォーホルや、飛ぶ鳥落とす勢いだったギャラリー・オーナー、メアリー・ブーンの新人アーティスト売り出し戦術など、面白いエピソードも満載の本書、SEAに関心を持つ人にとってはクラシックテキストであり、モダニズムとは、ポストモダニズムとは何だったのかをおさらいすることもできる。