The Art of Direct Action: Social Sculpture and Beyond
1990年代以降、現代アートの一つの潮流となったソーシャリー・エンゲイジド・アート(=ソーシャル・プラクティス)は、ヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」に影響を受けているとよく言われる。本書は、ボイスが主に米国のアートシーンでどのように受容されたか、芸術は社会の現実をいかにして変えることができるか、芸術がアクティビズムと結びつくことの是非、といったテーマを中心に、研究者によるエッセイと実践者への比較的短いインタビューで構成されている。3人の編者にはあまり馴染みがないが、寄稿者やインタビュイーには、この分野における第一人者の名前が並ぶ。メアリー・ジェーン・ジェイコブ、グラント・ケスター、ペドロ・レイエス、グレゴリー・ショレット、ダニエル・ジョセフ・マルティネス、キャロライン・ウーラード等々。エッセイでは、編者の一人、キャラ・M・ジョーダンの米国におけるボイスとフェミニズムについての論考が非常に興味深い。ケスターの論考は、急進的社会運動が席巻した1960年代末に遡り、芸術のあり方に関するアドルノとボイスの考え方の違いを明らかにしている。インタビューでは、私たちがぜひ聞きたい質問、たとえば「社会彫刻とアクティビスト・アートはをどう違うか?」「あなたの実践がアートと認められることは重要か?」「自身のオーサーシップと共同創作者の貢献をどのよう両立させるか?」などを各対象者に投げつけていて、それぞれの返答が面白い。ケスターとロバーツのエッセイ以外はわかりやすい英文なので、SEAを学ぶ研究会やゼミのテキストに使える一冊ではないだろうか。
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