More Art in the Public Eye

Micaela Martegani, Jeff Kasper and Emma Drew(編)
2020

More Artは、2004年にニューヨークで誕生した「ソーシャリー・エンゲイジド・パブリック・アート」を支援するNPOである。本書は、設立15年の節目に、これまでの活動を振り返り、これからを展望する一冊だ。Creative Time やA Blade of Grassと類似したミッションを持つNPOだが、1990年代末から急速にジェントリフィケーションが進み、ソーホーに替わるお洒落なアート・ディストリクトとなったチェルシー地区でスタートし、この地域の住民や団体、学校と密接な関係を築きながら活動してきたことに特徴がある。イントロダクションの3本のエッセイ、「現在に適応したパブリック・アートの実践:ニューヨーク市におけるMore Artの15年」「ソーシャリー・エンゲイジド・アートの歴史と拡張するパブリック・アート制作の領域」「フィランソロピーとソーシャリー・エンゲイジド・アートの現在」では、More Artの15年間の簡潔な活動史とSEA全般の現在地が描かれる。以下、1章から4章までは、More Art がこれまでに実現した50余のプロジェクトから12事例を選び、アーティストへのインタビュー含めて紹介。結びではMore Artの今後の展開と方法論に加え、(SEAがすでにある程度の理解を得ている米国社会において)未来のSEAの役割とは何かが語られる。そこでのSEAのプロデューサーは「たとえ善意からでも、完璧な解決という自分たちのビジョンを押し付けてしまう危険性がある」ことに留意すべきだというくだりが印象的だ。