SEA専門マガジン『ア・ブレイド・オブ・グラス』日本語版第3号発刊

黒い目出し帽をかぶり、拳を突き上げる姿は、1994年にメキシコ南部チアパス州で蜂起した先住民主体のゲリラ組織「サパティスタ民族解放軍」の女性リーダー、ラモナ司令官のコスプレ。演じているのは、ニューヨーク、クイーンズのラテン系移民女性コミュニティ「ムヘレス・エン・モビエント(移動する女性)」の創設者、ベロニカ・ラミレスさん。「規範に挑戦するアーティストたち」というこの号のテーマを象徴するビジュアルです。

「規範に挑戦するアーティスト」とは、身体的、経済的、制度的な理由で社会の「標準」からはずれ、「周縁」に位置づけられた人たちの経験と創造性を肯定し、彼らに対する人々の見方や態度を変ようとしているアーティストを意味しています。

オリジナル版には、再収録のエッセイを含めて6編の記事が掲載されていますが、メンタルヘルスや障害者の問題に関する記事は、米国での取り組みを日本に当てはめて考えるのは難しいため、日本語版には、社会復帰に困難がつきまとう元受刑者のアイデンティティ再生プロジェクト、ジェントリフィケーションで追い立てられる極貧層やホームレスのための住宅供給をアーティストが主導して実現しようとしている事例、差別や搾取の対象となる移民労働者の問題に「写真」というメディアを活用して連帯・抵抗するプロジェクトを掲載しました。

連載の「アーティストに聞く」では、ニューヨークのイースト川に浮かべたはしけをフードフォレストに変え、人々が集い、食の持続可能性を学ぶプロジェクト《スウェイル》で知られるメアリー・マッティングリーが読者からの質問に答えます。そして、ABOGのエグゼクティブ・ディレクター、デボラ・フィッシャーは、芸術機関を原子炉に喩えた興味深いエッセイを執筆しています。

Contents
▪︎ 第3号イントロダクション
▪︎ 未来の自分を思い描く:投獄後のアイデンティティの再生
▪︎ スキッド・ロウの低所得層住宅(アフォーダブルハウジング)を創造的に
▪︎ 移民の抵抗と連帯による協働のアート
▪︎ アーティストに聞く:メアリー・マッティングリーが質問に答える
▪︎ 芸術機関(アート・インスティチューション)を原子炉に喩えてみよう

『ア・ブレイド・オブ・グラス』日本語版第3号PDFダウンロードはこちら(9.4MB)