地域アート 美学/制度/日本

藤田直哉(編・著)
2016

地域アートSF・文芸評論家の藤田直哉が『すばる』(2014年10月号)において発表した「前衛のゾンビたち―地域アートの諸問題」をはじめ、田中功起、じゃぽにか、遠藤水城などのアーティストやキュレーターとの対談のほか、加冶屋健司など研究者の論稿も収録した一冊。ある地域名を冠した美術のイベントを「地域アート」と名付け、増加傾向にある国内の国際美術展やアートプロジェクトをそれらが現代アートを出自としながらも、「地域活性化」という名目を与えられることで正当な批評を受けにくい状況を指摘。過去の運動を参照することで自身を正当化してみせながらも実際は形式化してしまった現代アートを、土に還りかけている「前衛のゾンビたち」という呼び名で批判するものの、そこには逆説的な期待も込められており、本書では一義的な批判ではなく多様な論客の視点を交えながら、国内の国際美術展やアートプロジェクトの現状を捉えようとする筆者の姿勢が伺える。