アート・スポンサーと倫理の問題

美術館や劇場などの文化施設は、倫理的観点から特定の企業の資金援助を拒否すべきか? このことは日本ではほとんど議論を呼んでいないようだが、英米では非常にコントロバーシャルな問題だ。
英国ではアクティビスト・アート集団Liberate Tateが、国際石油資本BPがテート美術館のスポンサーであることに反対するゲリラ・パフォーマンスを行ったり、最近では、この夏イングランド北東部ニューカッスル/ゲーツヘッドで開催されるアート・フェスティバル「Great Exhibition of the North」にBAEシステムズ(国防・情報セキュリティ・航空宇宙関連企業)が資金提供を予定していたが、一部のアーティストのボイコット表明から抗議運動が高まり、BAEシステムズはスポンサーから撤退した。
米国のアクティビスト・アート集団Not An Alternativeは、「The Natural History Museum」と称するプロジェクトで、自然史博物館が石油や天然ガス会社から多額の資金提供を受けることにより、地球環境の真実が隠蔽される危険を暴き出している。

このような芸術文化支援と倫理の問題に関して、英国のアート関係者向け情報サイト「ArtsProfessional」が現在「アート・スポンサーシップにおける倫理~資金を受ける危険」と題するオンライン・サーベイを行っている。たとえばこんな質問がある。

  • 文化組織は、支援を受けるとき、スポンサー候補あるいは大口献金者候補がどんな活動をしているかを考慮すべきだと思うか?
  • 文化組織は、以下の分野で活動する組織や個人からの資金提供を断ることを考慮すべきだと思うか。当てはまる分野にチェックを入れよ 1.環境関連(化石燃料、汚染、原子力など) 2.政治関連(圧政、党派政治、軍備など) 3.健康関連(アルコール、たばこ、ギャンブル)など 4.動物関連(動物実験、工場式畜産など) 5.その他 6.考慮の必要はない
  • あなたの組織では、スポンサーシップや大口献金を受け入れる最終的な決定をするのは誰か?
  • あなたの組織は、スポンサーシップや大口献金者について倫理的に判断するための指針を持っているか?

一方で公的資金に頼らないファンドレイジングが求められ、一方で問題あるパートナーシップへの抗議行動が先鋭化する英国で、芸術文化関係者はどんな回答をするのたろうか。

2018.3.31(秋葉美知子)