SEAの現在地を描き出す米国のレポート

「Mapping the Landscape of Socially Engaged Artistic Practice」p.15-17より作成

ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)に関する歴史、理論研究や事例報告などが増える中、米国のコンサルティング会社ヘリコン・コラボレイティブが、SEAの現在地が非常によくわかるレポート「Mapping the Landscape of Socially Engaged Artistic Practice」をウェブサイトで公開している。主にアーティストやプログラム・ディレクター、資金提供者など実践に関わる人々へのヒアリングをもとにまとめられていて、なるほどと思わせるコメントや考察が数多く記述されている。

本レポートは、「ソーシャリー・エンゲイジド・アートの実用的な定義は、特定のコミュニティまたは世界全体の状況を改善することを目的とした芸術的または創造的な実践」とし、これに「スタジオ・アート」を対峙させている。「スタジオ・アート」は、「アーティストが主に作品の形式的または美的クオリティの開発に焦点を当て、オーディエンスに発表する芸術作品の制作を目的とする実践」と定義している。現在のアートスクールの教育や作品クオリティの評価、芸術支援の制度はスタジオ・アートの伝統に基づいており、このアプローチは多様な発展の系譜を持つSEAには適しておらず、独自の知識・理解の枠組みが必要だという。

もちろん、SEAを前述のようにかなり幅広く定義すると、多様なバリエーションが含まれる。このレポートが面白いのは、それらをタイプ分けするのに役立つ9つの指標(美学、アーティストの役割、アーティストの出身地/拠点、workの定義、影響の方向性、workの創始、場所、課題、継続期間)を提示していることだ(右図)。個別のプロジェクトについて、これらの指標ごとにプロットして折れ線を描いていけば、プロジェクトのタイプを総合的に理解でき、支援や評価にも役立ちそうだ。

2020.2.28(秋葉美知子)