ソーシャル・チェンジとアート:UCバークレーの場合
ロンドンのShapero Modern(古書店が運営する近現代版画専門ギャラリー)で、America in Revolt: the Art of Protestというポスター展が開かれている。1970年5月にカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)で行われた「政治ポスター・ワークショップ」で学生たちがつくったスクリーン印刷のポスター50点を、カウンターカルチャーの歴史家、バリー・マイルズのキュレーションで紹介する展覧会だ。1970年5月というと、ニクソン大統領が米軍をカンボジアに侵攻させ、それに反対するオハイオ州ケント州立大学の学生集会で兵士が参加者に発砲する事件が起きた直後。反戦や平和への願いをストレートに表現するポスター・デザインは、パリ五月革命時(1968年)に美術学校の学生が立ち上げた民衆工房(アトリエ・ポピュレール)でつくられたポスターや、米国のカウンターカルチャー・ポスターに似たDIYスタイルで、アート作品として制作されたものではないながら、グラフィック・アートの一時代を象徴している。
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UCバークレーのソーシャル・チェンジへの取り組みは、現在どうなのだろう? と思って調べてみると、Big Ideas@Berkeleyという学生対象のコンテストを実施していることがわかった。現実の問題に取り組み、ソーシャル・チェンジをめざす学生たちの革新的なアイディアを募集し、優秀案に資金援助するというもの。「Energy & Resource Alternatives」「Food Systems」「Global Health」「Information Technology for Society」など9つのカテゴリーに分かれていて、その一つが「Art and Social Change」だ。このカテゴリーのこれまでの受賞案を見ると、内戦・難民・テロリズムなどネガティブなイメージで見られがちな中東で、ポジティブに活動する社会起業家たちをビデオで紹介するプロジェクト、インタラクティブな街灯をバークレーの街路に設置し、安全で活気のあるコミュニティ歩道をつくるプロジェクト、養子として米国で育っているロシア人の子どもたちのドキュメント映画を制作するプロジェクト(近年ロシアは米国人がロシア人の子どもを養子にすることを禁止している)などがあった。
ところで、Big Ideasのシンボルマークは紙飛行機。航空技術の進歩は紙飛行機の夢から始まったことから、紙飛行機は“創造の始まり”の象徴になっているという。ソーシャル・チェンジをめざす学生たちの初飛行を支援するという意味で、このマークがつくられたそうだ。ついAKB48の「365日の紙飛行機」を連想してしまった。
(秋葉美知子)
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