ア・ブレイド・オブ・グラス2020年度フェローシップの募集概要

A Blade of GrassのFacebookより

ソーシャリー・エンゲイジド・アートに取り組む米国のアーティストに対象を絞り、プロジェクト資金の助成と活動支援を行っているアートNPO、ア・ブレイド・オブ・グラス(ABOG)が、2020年のフェローシップ募集を開始した(2019年10月16日締め切り)。このプログラム(A Blade of Grass Fellowship Program)は、アーティストが主導するSEAプロジェクトに、かなり自由に使える2万ドルの資金をはじめ、ネットワーキングの機会や広報宣伝の支援などを提供するもの。2014年に始まり、今ではSEAに関心のあるアーティストなら誰もが取りたい助成金になっているようだ。

応募資格は、米国民または合法的な就労資格を持つ米国在住者に限られているが、このプログラムのガイドラインは米国におけるソーシャリー・エンゲイジド・アートの意味合いを知る上で大変参考になる。で、以下、ABOGのウェブサイトに掲載された応募要領より、主要な部分を紹介したい。


 

■フェローシップの概要

私たちは、ソーシャリー・エンゲイジド・アーティストが、より公正で、公平で、持続可能で、楽しく、思いやりのある未来を創造するために、有意義な関与をする力を信じています。 このことは、アーティストが芸術とは関係のない多様なパートナーやコミュニティとともに活動し、相互信頼に基づいた関係を発展させるために、時間をかけ注意を払わなければならないことを意味します。私たちは、このタイプの活動には既成のロードマップや保証された成果はないことを理解しており、アーティストがこれらのプロセスや関係性をどのように舵取りするかを知ることに力を注いでいます。

私たちのフェローシップ・プログラムは、勇気あるアーティストが、一見解決困難な社会問題に光を当て、オーディエンスに刺激を与え、人々が長期的なソーシャル・チェンジの活動に参加し、それを持続するよう活気づける交換(exchanges)、体験(experiences)、構造(structures)を生み出すことを支援するものです。これは困難で時間のかかる、組織的、知的、そして感情的な仕事です。

私たちは共同調査の要素を組み込んだ比較的制限のない資金を提供することを約束します。 さらに、アーティストが書く実施報告に代わるものとして、フィールドリサーチを行います。これはアーティストによって明確化された目的と調査の範囲、そしてプロジェクト参加者の視点に基づいて行うものです。

直接的なアーティスト支援に加えて、ABOGのもう一つの主要な目的は、ソーシャリー・エンゲイジド・アートの「見えない」部分を可視化することです。 私たちはこれを、ドキュメンタリー映画、出版物、ウェブコンテンツ、そしてパブリック・プログラムを通して行います。 ただし、これらの内容についてのコラボレーションはフェローシップの義務ではなく、相互利益に基づく個別の契約で行います。

■選定基準

このフェローシップは、世界でソーシャル・チェンジを起こすために素晴らしい芸術を使っているアーティストを支援することを意図しています。提案書を審査する際には、芸術的価値、ソーシャル・チェンジを実現するためのプラン、そしてアーティストがエンゲイジメントを実践する質を検討します。

あなたのプロジェクトがフェローシップに適合しているかどうか。以下について自問してください。

  • 私のプロジェクトがソーシャル・チェンジを起こすことができると説明できるか?
  • そのプロジェクトは何らかのかたちで、不公平な権力構造に挑戦し、それを変革、あるいは反転させるだろうか?
  • ますます分極する政治的状況において、そのプロジェクトはより大きな謙虚さ、集団性、コミュニケーションand/orケアの可能性を高めるだろうか?
  • そのプロジェクトは、参加者やオーディエンスが想像力に富んだ、あるいは元気を回復させる見方や行動をするのを助けるだろうか?
  • そのプロジェクトは、参加者が、固定された社会構造に積極的に影響を及ぼし、未来への大きな希望を生み出すことができると感じるような行動形態を提案しているか?

2019.7.23(秋葉美知子)