アメリカの公的芸術文化助成
前回の投稿で、米国の財団による芸術文化助成について紹介したが、今回は参考までに公的助成を見てみよう。
米国の公的芸術文化助成は、連邦政府機関の全米芸術基金(National Endowment for the Arts =NEA)によるものと、地方政府予算によるものに分けられる。これは日本でも文化庁と都道府県・市区町村がそれぞれ芸術文化予算を持っているのと同様だ。米国の仕組みは、NEAは全米規模の独自プログラムを実施すると同時に、総助成予算の約40%を交付金のようなかたちで各州の受け皿(ステート・アーツ・エージェンシー=SAAと総称される組織。それぞれ、○○アーツカウンシル、○○アーツコミッションなど個別の名称を持つ)に配分している。SAAは、このNEAからの分配金に州政府からの予算を加えて、アーティストやアートNPO支援、アート教育、コミュニティ活性化、パブリック・アートなどさまざまな事業を行っている。さらに各州の地方自治体(市や郡)にも総数4,500にのぼる芸術文化組織があり(ローカル・アーツ・エージェンシー=LAAと呼ばれる)(注)、地方政府からの予算措置や民間からの支援を得ながら活動している。
しかし、米国では芸術文化は基本的に私的領域と見なされ、公的支援には消極的で、それは政府予算の規模から明らかだ。2017年度(米国の会計年度は前年10月から当年9月まで)のNEAの予算は約165億円、SAAに対する州の予算措置は約375億円、LAAに対する地方政府の予算措置は約910億円、合計約1,450億円である。この数字は、メジャーな1,000財団による1万ドル以上の助成金だけを集計した総額が約3,300億円(2016年)だったことと比較すると、半分以下にすぎない。それでもトランプ政権は、発足以来予算教書提出のたびに、NEAと姉妹機関NEH(全米人文科学基金)の廃止を盛り込んでいる。
対して、日本の公的芸術文化助成はどのくらいかというと、NEAにほぼ相当する文化庁の予算は2016年度で1,040億円(NEAの約6倍)、都道府県・市区町村の芸術文化関係経費は4,489億円で、合計5,529億円。この数字はピーク時(1993年)の約半分だが、これでも米国の同様の公的支出の約3.8倍になる。
(注)米国のローカル・アーツ・エージェンシーは、3割が自治体の直営、7割がNPO。自治体直営組織では予算のうち公費の割合が59%なのに対し、NPOでは17%にとどまる。
日本の状況について詳しくは、
「文化芸術関連データ集」(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/seisaku/15/03/pdf/r1396381_11.pdf
「地方における文化行政の状況について(平成28年度)」(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/chiho_bunkagyosei/pdf/r1393030_01.pdf
2019.4.27(秋葉美知子)
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