HIV/エイズ・アクティビスト・グループ、ACT UPの運動は続く

ACT UP at the June 2017 Pride March, New York City ©Mark Apollo/Hashtag Occupy Media

ACT UP(AIDS Coalition to Unleash Power)といえば、SEAの歴史をたどる上で忘れてはならいアクティビスト・グループだ。エイズ危機に対する米国政府の無理解・無策への怒りから、1987年にニューヨークで結成。SILENCE=DEATH のロゴを使ったポスター、Tシャツ、バッジ、ネオンなど、アーティスト・コレクティブGran Furyが手掛けるグラフィックデザインや宣伝広告手法を駆使して、エイズについての正しい知識の伝播、政府や製薬会社への抗議行動などを展開し、エイズ治療薬の開発・普及を加速させる大きな力となった。ACT UPは現在も、社会的弱者のニーズを汲んだヘルスケア・システム構築の緊急性を訴え続けている。

結成30周年を迎えたACT UPは、6月25日にニューヨークで行われたプライド・マーチに参加し、「メディケイド」「オバマケア」「ライアン・ホワイト・ケア・アクト」「PEPFAR(大統領エイズ救済緊急計画)」といったトランプ政権下で危機に瀕している医療保険制度やエイズに関連する公的支援の名称を記した黒い棺をメンバーがかついで行進した。

ニューヨーク市の津博物館ウェブサイトより

一方、ニューヨーク市立博物館では、10月22日まで「AIDS at Home: Art and Everyday Activism」と題する展覧会が開かれている。「介護」「住居」「家族」の3つの視点から、患者の私的生活を見つめ、支えたアーティスト20余人による絵画、写真、ビデオ作品や、アクティビストの活動記録などを、30年のスパンで展示している。エイズ禍であらわになった社会の課題はまだまだ終わっていない。

(秋葉美知子)