多様性と包摂をテーマとした野外展覧会が検閲を受け、開催を中止に
ダイバーシティ、エクィティ&インクルージョン(多様性、平等、包摂:略称DEI)の考え方は、米国では主流になっているだろうと思いがちだが、保守派の強い地方では決してそうではない。
「プロジェクト紹介」のページで紹介した、フロリダ州サラソタを拠点に活動しているNPOエンブレイシング・アワ・ディファレンスは、毎年開催している野外展覧会を、今年度はベイフロント公園での展示終了後、2会場に巡回展示する予定だった。ところが、2023年4月26日から開催を予定していたフロリダ州立カレッジ・マナティ・サラソタ校(SCF)から、3点の作品を展示から外すよう求められた。その背景には、来年の大統領選挙に共和党から出馬が予想される反リベラルの保守派で中絶には反対の立場をとる、ロン・デサンティス、フロリダ州知事が、公立の大学にDEIと批判的人種理論に関するプログラムを設置させないという計画を発表したことがあった。
問題になった作品は、ボクシンググローブをはめた黒人少年を中央に、公民権運動の指導者ジョン・ルイス、BLM(Black Lives Matter)の文字などを配したコラージュ《Good Trouble》(Clifford McDonald作)、妊娠中の女性が男性グループに「私たちは自分の体について声を上げられないの? 」と尋ねる様子を描いた《Body & Voice》(Diego Dillon作)。そして、世界各地の仮面を大木の下に配した《Being Different Gives the World Color》(神戸在住のアーティスト、Taira Akiko Hiraguri作)は、この作品に添えられたメッセージに“Diversity and inclusion”という言葉が含まれている。
この明らかに政治的な検閲に際して、EODの理事会は、大学側の要求は組織のミッションに反するとして、全員一致でSCFでの展覧会をキャンセル。代替の開催地を検討しているという。
2023.3.9(秋葉美知子)
最近のコメント