パブリック・アート専門誌から形を変えたデジタル・マガジンFORWARD

非営利のアート組織FORECASTは、米国ミネソタ州セントポールを拠点に、公共の場で活動するアーティストを支援している。創立は1978年で、1989年から全米唯一のパブリック・アート専門誌『Public ArtReview 』を出版していた。この雑誌は私たちも長く購読していたが、2020年に廃刊となり、その後パブリック・アートにとどまらず、より広いSEAに関わるテーマを特集するデジタル・マガジンFORWARDに形を変えて、無料公開されている。

FORECASTウェブサイトより

最新の第6号は「気候」がテーマだ。気候変動に取り組むことは、環境問題にとどまらず、社会正義と人権の問題に取り組むことでもあり、それを知らしめるためにも、アーティストたちの役割が重要性を持つことをさまざまな事例を紹介しながら論じている。ケーススタディのページでは、「大気汚染」「猛暑」「洪水」「気候変動による住民の強制移住」の4つの問題について、アーティストたちが科学者、大学、政策立案者、コミュニティなどと共同で行った11のプロジェクトが豊富な写真とともに紹介されている。

その中で驚いたのは、米国のFEMA(フィーマ)にアートプログラムがあるということ! FEMAとは、洪水、ハリケーン、地震、原子力災害を含む大規模災害に際して、連邦機関、州政府、その他の地元機関の業務を調整する「アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁」のことで、日本でも激甚災害が起きるたびに、類似した専門組織を創設すべきだという声が上がる。しかし、体制が整備されるとしても、その組織は、「アートを活用してエモーショナルに洪水のリスクを人々に伝え、災害の低減につなげよう」などという発想を持てるだろうか。

2024.2.16(秋葉美知子)