Giving USAとNCARレポートにみる米国の芸術文化団体のファンドレイジング事情
寄付大国アメリカでは、多くのNPOが民間から多額の寄付を得ながら、多様な社会的ニーズに応えるサービスを提供している。全米の寄付総額は、Giving USA財団が毎年発行している寄付白書『Giving USA』で知ることができる。今年度版によると、2015年の寄付総額は史上最高の3,732億ドル(約38兆円)を記録したという。そのうち個人寄付が71%を占める。寄付先の内訳は、宗教関係が32%と最も大きく、次いで教育関係15%、ヒューマン・サービス11%、助成財団への寄付11%、健康関連8%、公益事業7%。芸術文化は5%で、寄付者にとっての優先順位は決して高くないと言えそうだ。
米国の芸術文化団体は、寄付や助成金と事業収入、資産運用などで経費をまかなっているが、そのファンドレイジング実態を南メソジスト大学のNational Center for Arts Research (NCAR)が調査している。9月にリリースされた『NCAR Fundraising Report』によると、対象とした約4,200団体では、平均して支出全体の約57%が使途を限定しない寄付金収入でまかなわれていた(2014年データ)。活動分野によってその割合に差があり、コミュニティ団体が71%と最も高いが、11分野中7分野で50%を超えている。また、総運営費のうちどのくらいの割合がアーティストやプログラム制作スタッフの人件費に支出されているかのデータもあり、ボウモル・ボウエンの理論どおり、オーケストラ(59%)やオペラ(55%)が最も労働集約的になっている。その他にも、このレポートには、日本のアーツマネジメント関係者や研究者に役立つ、興味深い調査分析が掲載されている。
(秋葉美知子)
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