トランスジェンダーの人物の人称代名詞

ヴェラ・リスト芸術・政治学センターのウェブサイトより

ニューヨークのニュースクール大学ヴェラ・リスト芸術・政治学センターのフェローシップ・プログラムは、芸術と政治についての論考を前進させるような活動をしているアーティストやキュレーター、批評家、研究者を選考し、大学のリソースを提供しながら彼らのプロジェクトを2年にわたって支援している。2018-2020年のフェローには、ビジュアル・アーティストのDean Erdmannとアーティスト/キュレーター/評論家のHelene Kazanが選ばれ、去る10月5日の「ヴェラ・リスト・センター・フォーラム:もしアートが政治ならば」で発表された。2人のプロフィールとプロジェクトは、センターのウェブサイトに掲載されており、Erdmannは、アメリカの非自由主義についての半自伝的環境インスタレーションを創作、Kazanは、国際法、建築、暴力体験の交差点を探求する多分野横断型展覧会とパブリック・プログラムを行うという。

ここで気づいたのは、アーティストDean Erdmannの紹介文で、明らかに個人のアーティストなのに、人称代名詞が“they”になっていること。つまり、このアーティストはトランスジェンダーだということを意味している。

マスコミにおけるトランスジェンダーの人物の人称代名詞について、ニューヨークタイムズに興味深い記事があった。これまでさまざまな試行錯誤があったようだが、今日、トランスジェンダーの人物の多くは従来の“he”または“she”を選ぶという。しかし、あえて“they”“them” “their”を選んで自らのジェンダー・アイデンティティを明示しようとする人もいる。ワシントンポスト紙とAP通信は、場合に応じて単数扱いの“they”を許容しているという。英文の記事を読むとき、これは頭に止めておきたい。

2018.10.26(秋葉美知子)