ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践:芸術の社会的転回をめぐって
『ソーシャリー・エンゲイジド・アート入門:アートが社会と深く関わるための10のポイント』に続いて、アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会が企画・編集したアンソロジー。本書の目玉は、トム・フィンケルパールの「社会的協同(Social Cooperation)というアート─アメリカにおけるフレームワーク」と題するエッセイだ。フィンケルパールの著書『What We Made』のイントロダクションを和訳したもので、日本であまり紹介されてこなかった米国におけるコオペラティブ・アート(SEAとほぼ同じ意味)の系譜が丁寧にたどられ、1960年代からの政治経済的変化や社会運動にアーティストがどのように関わってきたかを知ることができる。理論においては、戦後日本の社会運動と視覚芸術の関係性を探る米国の研究者、ジャスティン・ジェスティが、クレア・ビショップとグラント・ケスターの対立を鋭く評しているのが刺激的だ。実践者の高山明(演出家)と藤井光(美術家・映像作家)のエッセイは、アーティストが社会問題と関わるときのさまざまな課題・問題を提起してくれる。巻末には、「ソーシャリー・エンゲイジド・アートに関連する戦後の美術と社会の動向」をまとめた年表を20ページにわたって収録。センターのカラーページにフューチャーしたアーティストたちのステートメントも非常に興味深い。
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