Kwel’ Hoy:我々は線を引く Kwel' Hoy:We Draw the Line
The Natural History Museum(NHM)といっても実在の博物館ではない。ニューヨークを拠点とするアクティビスト・アート・コレクティブ、Not an Alternativeが2014年から展開している移動式ミュージアム・プロジェクトの名称である。NHMは、アーティスト、キュレーター、コミュニティ団体、科学者、博物館スタッフ等と協働して、“ボスト真実”、気候変動危機の時代に、いかにミュージアムが、公共の利益にかなう、持続可能な未来のためのインスティチューションたり得るかに挑戦している。今や自然史博物館の活動を阻害する要因にもなる“ミュージアムの中立性”という神話を批判し、“museums for the commons” への変革を導こうと、展覧会、調査遠征、キャンプ、ワークショップなどを通じて、人々(オーディエンスとミュージアム関係者の両方)の意識を変え、行動をうながす実践に取り組んでいる。
そのNHMの最近の活動が、北米の先住民族ラミ族(Lummi Nation)の「トーテムポール・ジャーニー」を博物館に持ち込むプロジェクトである。ラミ族は、化石燃料会社による輸送事業が先住民の聖なる土地や暮らしを踏みにじり、スピリチュアルな伝統を損なうことに対するプロテストとして、部族を代表する名彫刻師ジュエル・ジェームズが彫ったトーテムポールを携えて、石炭や石油輸送ルートのコミュニティを旅するキャンペーンを2013年に開始した。NHMは、2017年10月、「アントロポシーン:ヒューマニティの時代の自然史博物館」をテーマに開催された国際博物館会議自然史博物館・コレクション委員会(ICOM NATHIST)のカンファレンスに合わせ、会場となったペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギー自然史博物館にこのキャンペーンを招き入れた。トーテムポールをシンボルに、旅の途上で集めたモノを展示し、映像上映、ディスカッション、ワークショップ、バスツアーなどで構成した展覧会「Kwel’ Hoy:我々は線を引く」を2018年3月まで行い、この運動を、当事者地域を越えて、博物館とそのオーディエンスに結びつけた。
ラミ族の「トーテムポール・ジャーニー」とNHMのコラボレーションはその後も継続しており、2018年4月から9月にかけては、ニュージャージー州ぺニントンで、地域の水資源に悪影響を及ぼすパイプライン建設への抗議を主目的に「Kwel’ Hoy: Many Struggles, One Front」を開催。2018年末には新しく彫ったトーテムポールとともにフロリダ州を訪問。12月8日から2019年5月5日まで、フロリダ自然史博物館で「Whale people : Protectors of the Sea」と題する海洋環境保全をテーマとした展覧会を行っている。
[参照サイト]
http://thenaturalhistorymuseum.org/events/kwel-hoy-we-draw-the-line/
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