Haircuts by Children and Other Evidence for a New Social Contract

Darren O’Donnell
2018

ダレン・オドネルは、カナダ、トロントを拠点とするアート&リサーチ集団ママリアン・ダイビング・リフレックス(MDR)の創立者であり、芸術ディレクター。MDRは、「人々はお互いにどのように関わりあえるか」をテーマに、“社会の鍼治療(Social Acupuncture)” と称する挑発的な参加型プロジェクトを世界各地で行っている。その代表的なプロジェクトが《子どもたちによるヘアカット》で、2017年にはA&S主催の「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展」の一環として東京で実施、その際に初来日したオドネルはレクチャーも行ってくれた。彼は社会における子どもたちの存在に大きな関心と期待を抱いており、全てのルールが大人の価値観で決定されている社会に子どもの振る舞いや視点を投げ込むこと、子どもたちを市民として意思決定に参加させることは、現実世界を変革するきっかけになるかもしれないと主張する。オドネルはこう書く。「子どもたちはどこにでもいる。どんなアイデンティティを持つ集団にも子どもたちがいる。そして、我々はみな、どんなアイデンティティや政治のもとにあろうと、子ども時代があり、子どもが置かれた状況がひどく無力であるという経験をしている。世界のいたるところに子どもたちの存在を染み込ませることは、不公正で紛争の多発する現状を揺るがすための戦略を提供できるだろうか?」。MDRと子どもたちとのさまざまなエンゲイジメントに込められた、ラディカルだが説得力を持つアイディアが、事例とともに展開される痛快な著作である。