ABOGの創設者デボラ・フィシャーがエグゼクティブ・ディレクターを辞任

デボラ・フィッシャー(A Blade of Grassのウェブサイトより)

ニューヨークを拠点に、ソーシャリー・エンゲイジド・アートに特化した支援で知られるNPO、ア・ブレイド・オブ・グラス(ABOG)が大幅に組織をリストラし、活動を縮小したことを2020年10月7日付の本ブログで紹介したが、今度は、創設者でエグゼクティブ・ディレクターのデボラ・フィシャーが5月31日をもって辞任し、自身の創造活動に専念するというアナウンスがあった。新しいリーダーにソクラテス彫刻公園の暫定エグゼクティブ・ディレクターを務めていたスージー・デルヴァールを迎えて、組織を継続、成長させていくという。

2年前、コロナ危機で組織の予算が蒸発していく中、社会的価値を追求する非営利文化機関はどのようにして活動を継続するかについて、非常に前向きに語っていた彼女が、どのようにこの決断に至ったのかはわからないが、ABOGのウェブサイトに掲載されたデボラ自身のメッセージの一部を紹介することで、彼女の今後の活躍とABOGの再始動に期待したいと思う。

私はA Blade of Grassを、そして私たち全員がこの11年間に成し遂げてきた素晴らしい仕事をとても誇りに思っています。私たちは、ソーシャリー・エンゲイジド・アートに特化した唯一の全米規模の非営利団体で、社会変革のためにコミュニティで活動するアーティストのニーズに合わせて柔軟に対応できる独自の資金調達構造を作り上げ、維持してきました。ABOGフェローシップを通じて、私たちは60以上のアーティスト主導のプロジェクトと協働し、海外のオーディエンスにも届くプログラム、コンテンツ、リサーチを生み出し、社会正義の目標に向かって活動するアーティストの価値を明確に示してきました。そして私たちは、インスティチューションとして、常に自分たち自身がソーシャリー・エンゲイジド・アーティストであるかのように振る舞おうとしてきました。

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私は、公共的、社会的な活動に焦点を合わせたアーティストとして、また、常に実践の共同体に属してきた者として、A Blade of Grassに参加しました。A Blade of Grassは、人々が集まって、美しくかつ意図的な何かを行う力を、私がどれほど信じているかの証明です。この11年間、創造的実践者たちの広大で国際的なネットワークを構築してきましたが、今こそ、よりローカルに、私自身のクリエイティブな人生とより直接的に結びついた形で活動する時期が来たのだと思います。2001年から合気道を本格的に学んでいる私は、道場を開いて武術を教え、武術家のコミュニティを作ろうと思っています(※)。また、私自身の芸術実践としては、2014年から占いの技術を研究していますので、占星術を深める時間を持つことを非常に楽しみにしています。

※デボラ・フィシャーは、ABOGマガジン第4号に掲載のエッセイ「A Tale of Two Dojos: An Allegory About Institutional Integrity」で、合気道の道場文化に言及している。

2022.6.7(秋葉美知子)